さぁーさぁーお立ち会い、御用とお急ぎでない方はゆっくりと聞いておいで見ておいで・・・から始まる「ガマの油売り」は、映画やドラマ、コントなどで見かけることがあります。
今では、大道芸としてバナナの叩き売りと並んで有名で、テンポあるその口上は聞いていて楽しくなって見とれてしまいます。
実際、そのガマの油とはなんでしょうか?調べてみましょう。
ガマの油とは?油売りの口上の意味は?
ガマの油は元々戦国時代頃に、徳川方の筑波山中禅寺の光誉上人の陣中薬の効果が評判になったのが由来です。
その光誉上人の顔がガマ(ガマガエル)に似ていたからという説があり、また、植物のガマの花粉やムカデを煮詰めた節、馬油だという説もあります。
江戸時代に筑波山の香具師永井の兵助が故郷のガマの油を売り出すために、ガマの油の口上を考えて出し、江戸の浅草寺境内などで客寄せのために披露したのが始まりと言われています。
口上は長文(ネットで検索するとあります)なので省略しますが、意味を要約すると白袴に鉢巻き、タスキ掛けの侍のような香具師が大道芸で客寄せしてから口上が始まります。
関東の名山筑波山の奥深くにしか住んでいないガマが、「おんばこ」という露草・薬草を食べて育ち、前足の指が4本、後足の指が6本の四六のガマになる。
そのガマを四面鏡張りの箱に入れると自分の醜い姿を見て、タラーリ・タラリと油汗を流す。この汁を集め21日間煮炊きして、赤い辰砂・ヤシ油・テレメンテーナ・マンティカを混ぜ合わすと出来あがり。
刀の切れ味を見せるため、紙を一枚から切り始め小さくなった紙片を紙吹雪にして吹き飛ばす。
ガマの油は万能薬であり、刃物の切れ味を止め、止血効果があるということを見せるため、仕掛けのある刀を使い、がまの油を付けると切れ味が止まる。腕を切って血を出したあとガマの油をつけるとピタリと血が止まる。値段は一貝二百文のところ半額の百文でどうだ。
という口上を軽妙に面白おかしく語り客に売り付けます。切り傷はトリックで腕は切れていません。
ガマの油の効能、成分は?
戦前には、筑波山ではガマの油として、本物のガマガエル(ニホンヒキガエル)の分泌物の蟾酥(せんそ)が入っている軟膏を作られていたこともありました。
ガマガエル(ニホンヒキガエル)の耳線や皮膚から分泌される蟾酥(せんそ)には、強心作用、沈痛作用、局所麻酔作用、止血作用があると言われています。
主な成分は、強心性ステロイドでブファリン、レジブフォゲニン、シノブファギン、ブフォタリン、シノブフォタリン、ガマブフォタリン、インドール塩基のセロトニン等を含みますが、毒性も含まれているので戦後に規制されて作らなくなりました。
現在は、筑波山名物の土産物としてガマの油の名称だけは残り、ワセリン、シコンエキス、スクワラン、尿素、ハッカ油などを成分とするガマの油を製造しています。
主な成分であるワセリンは、鎮痛・消炎の軟膏剤の基剤や潤滑剤や皮膚の保湿保護用に用いられ、乾燥を原因とする皮膚病や切り傷などの出血を一時的に止血する時に多用されています。
ガマの油の落語のあらすじは?
ガマの油という落語があります。
あらすじは、ガマの油の口上を軽妙に語って大儲けした香具師が、気分良く酒を飲み酔っ払ってしまいます。
帰る途中で人がいるので、また人儲けしようと口上を語りますが、酔っ払っているので呂律が回らなくて話す内容も支離滅裂になります。
切った傷をトリックを使ってガマの油で血止めをする場面で、本当に腕を切ってしまいガマの油を使っても血が止まらず、「トホホお立ち会い」
「何だ?」
「お立ち会いの中に血止めはないか」というオチで終わります。
実際にはガマの油は存在しない(使用していない)ようですが、ガマの油という筑波山名物の軟膏は有りますので、お試しあれ!